【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)4巻「ようこそ!呪われた城へ」編

完結後に振り返る「フォーチュン・クエスト」シリーズ。

 

※内容のネタバレを含みます

 

無印(新装版)4巻「ようこそ!呪われた城へ」

 

わいわい感というかがやがや感というか、こういうのが、これぞフォーチュン・クエスト!って感じだなと思うのです。真相も斜め上で面白いです。

 

 

発行日:1991年3月

 

アンデッドがたくさん徘徊する城でのクエスト。かなり怖い雰囲気の話になりそうなところですが、バタバタしながらおもしろおかしく進んでいき、なんか最終的にはかなりの大所帯になっちゃって、みんなでぞろぞろと塔に登っていく様子に、フォーチュン・クエスト特有の安心感を覚えます。

さて、4巻にして、やっとクレイが冒険に参加する話がやってきました。やっと!
この話では、クレイの悩みにも焦点が当てられ、彼の弱い部分というのが明るみになりました。
ティラリスによる幻覚を見て、呆然としてしまっていたクレイが、パステルの肩におでこをくっつけて弱々しく笑うところ。クレイの人間味のようなものが感じられて、すごく好きなシーンの一つです。
パステルとクレイって、いい関係性だよなって思うのです。
お互いそれぞれ思い悩むことがあって、それぞれ、悩みを打ち明ける側になるときもあれば、悩みを聞いて道を指し示す立場になるときもある。それができるのは、二人ともちょっと似てるところがあって、パステルはクレイに、クレイはパステルに共感できる部分があるからなのでしょうか。私はそんなパステルとクレイの関係が好きです。
そして、クレイはここからどんどん精神的にも成長していって、頼もしさが増していくんだなって考えると、感慨深いものがあります。
いつかクレイがすごい人になって、パステルがクレイに関するエピソードをノンフィクション小説としてまとめる日が来るとしたら、この城でのエピソードは必ず入るんだろうなと思います。

で、行商人。初めて話に出てきましたね。
こいつがねぇ…そういうことだったんか…って、最終巻を経た今思います。

 


【以下、内容に関する雑多なメモ】
・やっぱりパステルとクレイは似た者同士
・サバドで大好評の竹アーマー
・アクス2回目の登場。彼の受難はまだまだ続く
・トンジャン苦手なルーミィ
・商魂すさまじすぎるプルトニカン生命
ホーリースプレーが役に立つ
・『へい、親方』登場
・ルーミィ「キュギー!」
・トマス登場
・逃げがちなトラップ
・ショートソードで戦うパステルさんかっこいー!!パステルが接近戦でこうやって戦うのってなかなかないよね
・レディ・グレイス姐さん初登場
・ピンゾロ愉快な登場
・命のママAって
・ティラリスの恐ろしい魔法
・クレイ………
・帰ろうとするトラップと、塔に登ってどうにかしようとするクレイ
・ここからトラップによる毛糸のパンツいじりが始まる
・レディ・グレイス姐さんを心配するノルかっこいー!!!!!
・クレイの悩み
・危ない爆弾はノルのリュックに入れてもらってたキットン。おいこら
・自分の剣は汚したくないクレイ
・ゾロがいちいちおもしろい
・許しを請う『城』を叩ききるなんてできないよねぇクレイ…。ほんと優しい
・行商人の話がここから始まる
・ウギルギさま登場
・神様に営業かけちゃったヒュー・オーシ
・新装版書下ろしストーリーはキットン。結構な衝撃エピソード


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【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】まとめ - きまぐれ雑記帳

 

 

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)2~3巻「忘れられた村の忘れられたスープ」編

完結後に振り返る「フォーチュン・クエスト」シリーズ。

 

※内容のネタバレを含みます

 

無印(新装版)2~3巻「忘れられた村の忘れられたスープ」

 

上下巻モノで、話がとても濃いです。色んな人物が出てきて、色んな場所に行きます。
その後もたびたび話題にあがる、「あの」出来事の起こった話です。クレイって不憫。

 


 

2巻発行日:1990年5月


 

3巻発行日:1990年9月

 

登場人物も多く、舞台となる場所も多く、色んなことをする。散らばった伏線がクライマックスに向けて、一つの箇所に集まっていく。バラバラになっているパズルのピースが、だんだんはまっていくような、そんな感覚。

シリーズ全巻読んでなお、このオウム化事件が、クレイ最大の災難だったのでは…と思いますね。1巻では戦線離脱、2巻と3巻ではオウムになる…。ほんと不憫…。

そしてシロちゃんが終始けなげすぎて涙ちょちょぎれてしまう。こんな賢くていい子がパーティの仲間になってくれたなんて、パステルたちはなんて幸せなんだ。「わかんないこと言うやつだったら熱いの吹くデシ!って言ってくれるシロちゃん、ふらふらになりながら火の番してくれたシロちゃん、ぎゅーーーーってしたい。

この話でちょっと印象的だったのが、パステルにマッパーとしての役割から逃げさせなかったトラップですね。
フォーチュンシリーズ読み進めていてわかってはいたんですけど、この話を改めて読んで、彼のスタンスは本当に一貫しているなと思ったのです。「代わりにやってあげる」のではなく、「背中を押す」のみ。自分のやるべきことはしっかりやれ、というスタンス。厳しいけど、同時に優しいところでもあるなと、今では思うのです。
そんなトラップなので、そりゃあ、某氏のスタンスとは喧嘩してしまうわけだ。考えれば考えるほど、某氏とトラップは真逆ですね。優しさの種類が違うんだな。(新2~5巻の話をしています)

 

 

【以下、内容に関する雑多なメモ】

・メンバー紹介のトラップが半裸。あのタイツを大切そうに洗っている。例のタイツね…
・キットン、まわりにハエみたいなのが飛んでるって…キットン風呂入って…
・石化しても長期の入院で済むのか
・ジュン・ケイ様初登場
・聖騎士の塔の話題が出てくる
・トラップのことを「鈍感未熟男」と称するパステル。鈍感ねぇ…(首をかしげる
・とってもマメなクレイ
・ラップバード2回目の登場
・ルーミィ、フライの魔法を覚える
・キャップにピンクのスライムがはりついたペンって、最終巻の「THE END」のやつ?
・クレイ~~~~~~~!!!!!!!!!(叫)
・シナリオ屋の方のオーシがあの顔でローレンスであることが判明
・ヒポちゃん初登場(プルトニカン生命所有)
・サラスが出てくる
・ノルはヒポちゃんと話せる
・オーム同士が言い争う挿絵笑う
・叫ぶだけ叫んでパステルの後ろにさっと隠れるトラップ
・女性冒険者のトイレ事情は大変
・徐々に覚醒していくキットン
・アクスくん初登場
・トラップも思うことが色々あるのね…
・シロちゃん!!なんてけなげなの…
・ダンジョンのブルース
・控えめに言ってジュン・ケイ様かっこよすぎる
・「全然使ってないから」ってノル…やさしすぎるよ…
・スライムの夫婦の妄想
・JB殿登場
・ノルがすごい(語彙力)
・「盗賊の苦労もおわかりになった?」
・汚い手ぬぐいを渡すトラップ(受け取らないパステル)
・ゲームに関して熱弁するトラップ
・ラップバードたちグッジョブ!
・「ガッテン承知デシ!」かわいい…
・エルフの里の歌
・盗賊のルンバと薬草音頭が気になりすぎる
・シロちゃんほんとけなげすぎて泣いちゃう
パステルの初恋
・クレイよかったねぇ
パステル強い
・メナース様ぁ………
・英雄キットン
・クレイ、ブレストアーマーをもらう
・ジュン・ケイ様カミングアウト
・トラップ「もうちっと釣り合う相手のほうが無難だぜ」
・新装版書下ろしストーリーはクレイ。(2巻と3巻で上下もの)かっこいいぞ!

 

 

 

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【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】まとめ - きまぐれ雑記帳

 


 

 

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)1巻「世にも幸せな冒険者たち」編

完結後に振り返る「フォーチュン・クエスト」シリーズ。

 

※内容のネタバレを含みます

 

無印(新装版)1巻「世にも幸せな冒険者たち」

 

フォーチュン・クエスト」シリーズ、第一作目。私はこの一冊で、一気にこのシリーズの大ファンになりました。とても思い入れのある、大切な話です。

 


 

発行日:1989年12月

 

先ほども記載したように、私はこの本に、ものすごく心惹かれました。
元々活字に苦手意識を持っており、本を読むことはかなり敬遠していたのですが、「フォーチュン・クエスト」はとにかく読みやすく、スッと内容が頭に入ってきました。そして、重々しいシーンのはずなのに、思わずクスッとなってしまうようなシーンがあったり。重さと軽さが絶妙なバランスで綴られる物語は、とにかく面白く、本を読むというハードルを低くしてくれたような気がします。

この「世にも幸せな冒険者たち」では、ホワイトドラゴンの子どもであるシロちゃんに出会い、パーティに加わります。シロちゃんは最初からかわいくて健気でとにかくかわいい。天使じゃん。

この話を今読んで思ったことと言えば、時の流れを感じるなということ。
フォーチュン・クエスト」シリーズの話が進むにつれて、パステルたちパーティも、かなり大物のモンスターと対峙することも増えていくわけで。そんな彼らも、第一作目の時期は、レベルアップの方法が「ぶっ倒れたときにスライムが潰れた」だったことを考えると、非常に感慨深いものがありますね。

そして、キットンが本当にただの怪しい人ですね。記憶もなく、興味のあることは薬草やきのこのことばかり。キットンはこのタイミングでゼンばあさんに出会い、自分がキットン族であることを自覚します。ここからなんですね、キットンが変わっていくのは。新10巻の結末のことを思うと、これも感慨深いなと。

1巻完結の物語。読了後の爽快感は、やみつきになります。
シリーズの良さが、一冊にぎゅっとつまっています。「フォーチュン・クエスト」シリーズを読んだことのない人におすすめするなら、これか、4巻の「ようこそ!呪われた城へ」だなって思います。

 

 

【以下、内容に関する雑多なメモ】
・ヒポちゃんいなくてシロちゃんにも出会う前だから、当たり前に長々と歩き
・ヒューのほうのオーシ初登場。派手なご登場。そして、ここでクレイのロングソードに目を付ける
・様見の泉
・クレイ戦線離脱
・トラップ懐かしの少林寺拳法
・トラップ「オリンピックなら四年に一度」。初期はこういうセリフも多い気がする
・そういえばキットンの薬草大会入賞の件に触れられたのってこの話だけ?(忘れかけてた)
・ユリアさんに見惚れる男連中の顔
・ゼンばあさんに飛ばされるトラップ(初)
・子供を送り出す母親なクレイ
・ポタカンは1巻から大活躍
・宝箱に目がないトラップ
・シロちゃんは初登場から当たり前のようにかわいい
・ラップバード初登場
・闇落ちルーミィ(?)の挿絵コワイ
・キットン覚醒
・トラップ「ジュースじゃなくてビールだった」
・ユリア(ではないんだけど)こええ → パステル「トラップも怖い」
・クルラコーン氏
・トラップと話すと口が悪くなるクレイ
・クレイどんまい
・新装版の書き下ろしストーリーはルーミィ。ルーミィとトラップの関係って好き

 

 

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【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】まとめ - きまぐれ雑記帳

 

 

 

 

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】まとめ

令和2年7月10日に最終巻発売を迎えた「フォーチュン・クエスト」シリーズ。

最終巻を読み終えた今、再びこれまでの「フォーチュン・クエスト」を振り返ってみることにしました。その感想や考察を綴っていきます。

 

【注意】

内容に、先の話のネタバレを含む場合があります。ネタバレを完全に回避したい方は、Uターンをお願いいたします。

 

<目次>

 

 

■無印(新装版)

 【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)1巻「世にも幸せな冒険者たち」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)2~3巻「忘れられた村の忘れられたスープ」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)4巻「ようこそ!呪われた城へ」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)5~6巻「大魔術教団の謎」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】無印(新装版)7~8巻「隠された海図」編 - きまぐれ雑記帳

 

■新

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】新1巻「白い竜の飛来した街」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】新2巻「キットン族の証」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】新3巻「偽りの王女」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】新4~5巻「真実の王女」編 - きまぐれ雑記帳

【「フォーチュン・クエスト」を振り返る】新6巻「待っていたクエスト エピソード1」編 - きまぐれ雑記帳

 

「フォーチュン・クエスト」シリーズ完結に寄せて


令和2年7月10日、平成元年から続くファンタシー小説、「フォーチュン・クエスト」シリーズがついに完結した。

この物語との出会いは、確か中学2年生。同じ部活に所属し、仲のよかった友人が「フォーチュン・クエスト」シリーズのファンで、勧められたことがきっかけ。彼女の推しキャラはトラップ、そして彼の曽祖父であるランド。私も彼女の影響を受けている。

 

「いまでないとき、ここでない場所。(中略)彼らの目的は……まだ、ない。」
フォーチュン・クエストシリーズの冒頭文。この文章を初めて読んだとき、とてもわくわくしたこと、今でもよく覚えている。一瞬で、パステルたちのいる世界に心が引き込まれた。

元々私は子どものころ、活字があまり得意な方じゃなかった。作文なんかは憂鬱でしかなかったし、学校でよくある「朝の読書の時間」なんかも好きではなかった。そんな私は、フォーチュン・クエストに出会ったことで、今まで根強くあったはずの活字に対する苦手意識が、どっかへ消え去っていった。受験や就職、その他の理由で離れていた期間もあるけれど、どんなに忘れていても、ある時唐突に、頭の奥で6人と1匹がひょっこり顔を出してくる。そしてそこには14歳の私も一緒にいて、大人になった私にパワーをくれる。
約15年間、私に大きく影響を及ぼした、大切な物語。

 

そんな思い入れのある物語の最終巻、意を決して表紙を開いた。
大好きな冒頭の文章は、最終巻仕様だった。本当に終わるのだ、と、ここでいよいよ実感が沸いた。

最終巻も、重さと軽さがいい塩梅の、いつものフォーチュン・クエスト
THE ENDの文字を見たとき、これ以上はない終わり方だと、感無量だった。

 

 

 


…さて、ここから先は最終巻のネタバレを含みます。
パーティのメンバーごと綴った感想や考察(というほどたいそうなものではない)です。
さくさくと、思っていることを書きます。

 

 

 

 

■シロちゃん

ほんともう健気でいい子でとにかくかわいい。褒めるしかできない。どんなに苦手なことでも大変なことでも、6人のために「がんばるデシ!」ってなってくれるシロちゃんに、何回も心を打たれた。ガトレアパレスの一件、苦手な匂いなのに頑張ったね……。

ヒールニントの山で最初にシロちゃんに出会ったのはパステル。そして、シロちゃんはパステルの「ついてきてくれる?」という言葉で、パステルたちパーティと行動を共にすることになる。
そして最終的にも、パステルについてきてくれたシロちゃん。最終巻のライラ荘のシーン、シロちゃんの名前が出てきてほっとしてしまった。これからも、ずっとパステルと一緒にいるんだろうな。

大きくなったシロちゃんが空を飛んでいるカラーイラストがすごく好き。新11巻かな。

 

■ルーミィ

挿絵に描かれる、ルーミィのお洋服も毎回楽しみだった。

ルーミィがママと再会できたシーン、FQシリーズ史上一番泣いたシーンかもしれない。よかったと思うと同時に、パステルの冒険者としての道のりはママとはぐれたルーミィと出会うところから始まったから、嬉しくて、でも切なくて。パステルの気持ちになって、涙が止まらなかった。
そして最終巻、シロちゃんはルーミィといた方がよい、と考えるパステルに対して、シロちゃんはパステルと一緒にいてあげて、って、舌ったらずな言葉で伝えたところ。3年間ずっと一緒にいてくれたパステルのこと、ルーミィは大好きなんだな。家族のような温かいパーティにいて、ルーミィは精神的にすごく成長したのだと思う。リンネアママも嬉しいだろう。リンネアママの気持ちになったりパステルの気持ちになったり、読者は忙しい。

『闇魔』との闘い、復活した『闇魔』は仮宿としてルーミィに目を付けたわけだけど、その場には、キットンや、他のエルフもいたはず。それなのに、なぜ『闇魔』は「ダントツに魔力が高い」と、ルーミィに目を付けたのか、それは結局明らかにならなかった。はず。まだまだルーミィに関しては、明らかになっていないことがあるのかな、なんて、ちょっとわくわくする。

最終巻のラストで、ルーミィの年齢が明らかになったことが記されているけれど、よくよく考えると、ルーミィそんな赤ちゃんのときに冒険者の資格取ったんかい。よくクレイは「ルーミィも受けるんだと思った」って申し込みしたな、と、ツッコまずにはいられなかった。

例えルーミィがパステルたちの元を離れるのだとしても、ずっと離れ離れの関係はいやだなって、最終巻を読む前、思っていた。パーティ解散後、ルーミィはエルフの里でみんなに愛されて、パステルを頻繁に訪ねてきて、お祖母様たちにも可愛がられて。これ以上ない、幸せな結末だったんじゃないかな、って思う。

 

■ノル

ノルは初期から最終巻まで全く変わらなかったんじゃないかな。ルーミィの面倒を見たりパーティの荷物を率先して持ったり、とにかく優しくて頼りになる。ドーンと自分の貯金を出して、「使う機会ないから」とパーティのために差し出してくれるなんて。あまりにも良い人すぎない!?って思う。
口数少なくて、そこまで目立つことはなかったかもしれないけれど、パステルたちのパーティにとって、ノルの存在はすっごく大きかったんじゃないかな。物理的にはもちろんなんだけど、それ以外でも。重い荷物だって、文句ひとつ言わず持ってくれるし、小鳥と話ができるというノルの特技に助けられてるし。全員、ノルには感謝しかないだろうな。

それにしても、FQシリーズを読み始めてまだ日の浅い若かりし頃の私が、「大魔術教団の謎」でノルが死亡してしまったことに衝撃を受けたことを覚えてる。死者を生き返らせることのできる世界線でよかったって、心底思った。「大魔術教団の謎」は読むのが辛いのであんまり読み返してなかったかもしれない。

なんだろう、FQを読み始めた頃の私は、まだまだティーンと言われる年齢だったからわからなかったけれど、アラサーになった今考えると、ノルは本当にいい男だ。レディ・グレイス姐さんは良い目をしておられる。
ノルはこれからも変わらず、小鳥たちと会話したり、妹と一緒に平和に暮らすんだろうな。穏やかなシーンがすぐ思い浮かぶ。

 

■キットン

記憶喪失の状態だったキットンは、FQ第1巻から動きがあった。そこでゼンばあさんと出会って、自分がキットン族という種族であることを知ることから始まり、色んなことを経て、新10巻でついに妻スグリと再会する。再開したシーンの、ファンタジー感ある挿絵がとても好き。
スグリと再会してからは、もうすっかり愛妻家というか。普段の行動でも、ひとつ確固たる筋が通っていたような、そんな変化を感じた。キットンは一番、きっぱりとした意思を持った人かもしれない。だからパステルがそう思ったと同様、私も「ルーミィの家族が見つかるまではご一緒する」というキットンの言葉は、重く響いた。何事も、誰がどのような道を選ぼうが、選択権はその人にあるってわかっているのに。この時のパステルの気持ちが、痛いほどわかった。

実は36歳、パーティ最年長だということもあり、キットンは物事を俯瞰的に見ていることも多かったような気がする。キットンはまぁ、トラップのパステルへの気持ちにも気づいていただろう。だから最終巻最終章のあのシーン、キットンはスグリと一緒に覗き見していてほしい。スグリのおもしろい部分が最終巻で判明したし、もっとたくさん見たかったな。

そして、キットンで一番印象に残っているのは、新FQ「真実の王女」でのシーン。「パステルの人生はパステルのものです。でも個人的には、パーティには残ってほしいし、これから覚えていくキットン魔法をパステルにも見てもらいたい」って。(だいぶニュアンス&省略してる)自分の願望を全て嘘偽りなく、真っ直ぐと表した言葉。これが大好き。どんなこねくり回した言葉よりも、こういう率直な言葉が響くのである。

ワスレナイン私もほしい。

 

■トラップ

赤毛の盗賊。口が悪くて、ひねくれたようなことばかりするけれど、それは表面的であり、根っこの部分はとても優しい。そして、人のことをしっかりと思いやれる人だと思った。仲間のことを大切に思うからこそ、つい厳しい口調になることもあるし、状況によっては、ついおどけたようなことや、失礼な物言いをしたりすることもある。トラップはある意味、ものすごく人間らしいなと思う。
本当によく気が付くし、且つ、空気を読めるトラップ。だからこそ、例のペンダントも餞別になってしまったのだと思うけれど。 

クレイとはもはや遺伝子レベルでの親友。それと同時に、トラップにとっては、尊敬の対象でもあったんじゃないかと思う。
聖騎士の塔に再挑戦しに行くクレイについていこうとしたトラップ。「一人で行く」とクレイに言われたときは、どんな気持ちだったんだろうか。

トラップは確かに優しいけれど、パステルの言う通り、クレイとはベクトルの違う優しさ。甘やかさない、厳しい優しさ。これが、このパーティには必要不可欠なものだったように思う。組織にはこういう人が必要だ。実際、トラップのありがたみは、トラップ不在で出かけた新15巻の話でひしひしと感じた。

そしてまぁ、私はずっとトラップとパステルがどうにかなればいいなって思っていたので、そういう偏見の目があるのは否めないのだけど、パステルがお祖母様と仲直りをしようと決意できるまで強くなれたのは、トラップの持つ「厳しい優しさ」が大きかったんじゃないかと思う。

最終巻はもうほんと、別記事で吐き出したけど、がんばったなとしか。トラップの拗らせた片思いと思われたものを応援してきた身としては、とっても嬉しい。トラップ、めっちゃパステルのこと好きやん。
髪を切ったことは、やはり私には、区切り、そして決意のように思える。この先あと五悶着はあるだろうと予想しているけど、私はとにかくトラップの今後を応援したい所存。

ちなみに、最終巻を経た今、今までのFQシリーズを読み返して答え合わせをしている。パステルが半魚人にプロポーズされたこと、根に持ってるよね~とか。ペンダント、いつ渡そうか悩んで持ち歩いてたんだな~とか。
トラップの根っこの性格は変わらないものの、好きな子はいじめたくなるというただの小学校低学年男子的思考から、ちょっとずつ真剣なものに変わっていったのだろうか。成長したと思う。そのターニングポイントは、私はやっぱり「真実の王女」あたりかな、とか思ったりする。初期の巻から読み返してもう一回考えてみたい。まぁ、パステルに近づく男にわかりやすく敵対心バチバチになるところは一切変わってこなかったのだけど。

 

■クレイ

不幸体質なリーダー、クレイ。物語が進むにつれて、彼の優しさと暖かさが際立っていくように感じた。そして、頼もしさも増していった。度々、不幸が襲いがちだけど。
パーティのリーダーであり戦士なのに、第1巻ではいきなり負傷して戦線離脱。第2巻と第3巻ではオームになる、と。今考えて見ると、不憫があまりにもすぎてほんとおもしろい。クレイごめん。

ルーミィの「お父さん代わり」でなくて「お母さん代わり」なのがなんともクレイらしい。親ばか丸出しなクレイがとても好き。エプロンも似合う。

FQの結末としては、100年以上前、クレイの曽祖父であるクレイ・ジュダたちの話とも絡んでくるものだった。『闇魔』との闘いでも、彼の持つ、かつてはクレイ・ジュダが使っていたという「シドの剣」が重要すぎる役割を担ったわけで。この結末、作者である深沢先生はいつから考えていたことなのかな、と、気になるところ。
『闇魔』との闘い、パステルの体を乗っ取った『闇魔』を倒すために、シドの剣でパステルを斬らなければならなかった。とてつもなく、勇気が必要だったことだと思う。感動してしまった。クレイ、よく頑張った。

最終巻最終章、トラップとパステルの例のシーンを読んだあと、宇宙猫状態になっていた私は、クレイが竹アーマーで現れたシーンで我に帰った。いやさすがに笑う。感動の再会のはずなのに竹アーマーが気になって感動どころじゃないパステル。クレイはどこまでも不憫。それこそがクレイ。

パーティが解散してからも、6人と1匹の関係性は基本的には変わんないだろうけど(トラップは頑張れ)、最終巻ラストを読んで、クレイとパステルの関係性には変化があったような気がした。クレイは戦士且つパーティのリーダーという立場であり、パステルやルーミィを守らなければならなかった。そういった関係性だった二人が、パーティ解散後は、「何でも話せる良い友人」になった気がした。クレイが肩の荷を下ろしたような感じなのかな。
クレイとパステルは似ていると思う。二人ともお人よしで、たくさんの人に好かれて、わかりやすく思い悩むことも多い。だからこそ、共感し合えるところがたくさんあるのではないかな。
この二人はずっと良い友人同士でいることになるのだろうか。それは、とても素敵なことだと思う。

今までパーティのリーダーとして、責任感を持って過ごしていたクレイ。これからは、自分のことを考えていってほしいと思う。聖騎士の塔に挑戦して、きっと、青の聖騎士…いや、青竹の聖騎士になれる。

そしてクレイもパステルと同様鈍感だけど、早くマリーナとどうにかなってほしいと願うのみ。

 

パステ

物語の語り手であるパステルが、冒険者でありながらも特殊な能力は持たない、平凡な女の子であることが、FQ独特な魅力だと思う。彼女が等身大で紡ぐ、「いまでないとき、ここでない場所」の物語。置いてけぼりになることがなく、まるでその世界に自分も吸い込まれたかのような臨場感を味わうことができる。パステルの目線で語られる物語は、いつでも私をわくわくさせてくれた。
パステルは割とよく気が付く方だと思うけれど、自分のことは対象外。自分のことに鈍感すぎて、最終巻のラスト、トラップの悩みについて「応援したい気持ちはすっごくある」と語ったのは、読者一同総ツッコミしただろう。(私もひっくり返った)それもFQならでは。

平凡である、と書いておきながらも、火事場の馬鹿力の強さは平凡じゃない。特に、ルーミィに関して。冒険者になるために故郷を旅立ったとの日から、ルーミィを守ろうとしてきたのだから、当たり前なのだけど。一人で謎の行商人を追いかけるパステルには私もしびれた。そりゃルーミィもびっくりしてバグる。

FQの終盤、家族のように大切に思う仲間たちとの、いつか来る別れについて思いを馳せるパステルに、私はすごく感情移入してしまった。胸が痛かった。でも、パーティ解散を「後ろ向きなんかじゃなくて」と語ったパステルは、私なんかよりもずっと強く、たくましかった。

パステルは結局、唯一の肉親であるお祖母様から逃げず、仲直りをするという道を選ぶ。それは、3年間の冒険者生活で、精神的にすごく強くなったからできた決断なんだろうな。
思えば、普通の女の子が突然両親を亡くし、一人故郷を離れ、エルフの子どもであるルーミィを保護する。途中クレイとトラップに出会い、キットンに出会い、冒険者資格を取って、冒険者としての道を歩み始めた。そして、ノルに出会って、シロちゃんに出会った。パーティの財政管理を担当し、限られた金銭でいかに生活をするか、必死に頭を悩ませた。山に森に海に、あらゆるところに出かけ、様々な冒険者や、時には神様やアンデッド、ドラゴンにも出会う。危険な冒険も多々あったけれど、最終的に、ルーミィをママと再会させることができた。改めてFQシリーズを振り返ってみると、年頃の女の子の胸には収まりきらないくらいの濃い日々で、精神的にぐんと成長するには、十分すぎる環境だったように思う。(ここまで書いて、そりゃ、恋愛ごとを考えるヒマないわって思った)

パステルの成長が特に著しかったのは、やっぱりパステルが冒険者を続けるかを迷った、「真実の王女」だったのではないだろうか。
でもそこでやめていたら、あの結末は無かった。ルーミィを無事家族の元に送り届けたパステルでないと、あのようにお祖母様と和解はできなかったと思う。
色んな出来事を乗り越え、たくさんの出会いと別れを経験したパステルは、これから先ずっと、強くたくましく生きていけるだろう。最終巻の「パステル・G・キングの冒険は、まだまだ続いていく」という言葉には、そんな強さがにじみ出ていた気がした。

パステルは「家族がいない」ということに、時折不安定さと孤独感を感じていたけれど、家族のような仲間たちに恵まれ、多くの人に出会い、気づけば周りにはたくさんの人がいた。最終巻の集合イラストが、彼女が3年間で得たかけがえのない財産なのだと、思わず涙が出てしまった。
パステルはまさに、「世にも幸せな冒険者」だと思う。

苦しくてもなんでも、経験を積むことで人は強くなっていくという、至極当たり前の、でも大人になって忘れかけていたことを気づかされた。パステルと、パワーの有り余っていた頃の私に。

 

 

おわりに

私は今回、ひとつの物語、そして、ひとつのパーティの終わりを見届けたことになる。
終わりというものは、必ずしも悲しいものではない。むしろ、終わりをこの目で見届けられるということは、もしかしたら、とても幸せなことになる場合もあるのかもしれない、と気づいた。もちろん、状況にもよるのだけど。終わることに怯えて、背を向けているのは、あまりにも勿体ない。終わりの先に何があるかなんか、わからないのだから。
フォーチュン・クエストの完結を見届けた今、なんだか「終わり」というものに対して、前向きに捉えることができるようになった気がする。

6人と1匹との、大好きな冒険。寂しいけれど、同時にとても清々しく、満ち足りた気分だ。

 

深沢美潮先生、迎夏生先生、お疲れさまでした。素敵な物語を生み出してくださり、ありがとうございました。

 

私は世にも幸せな読者である。

 

 

 

「新フォーチュン・クエストⅡ」最終巻、トラップについて考えたこと

 

子どものころから愛読してきた「フォーチュン・クエスト」シリーズが、ついに完結の時を迎えた。

感無量すぎて、全体の感想はまとまっていないため、また改めて、落ち着いた頃に書くとする。

 

一旦、クソデカ感情がすぎて消化できなかった部分について、書き殴らせてほしい。トラップのことです。いわゆるトラパスの件です。

すべて、私なりの解釈です。

 

そして、最終巻のネタバレを含むため、まだ読んでいない・ネタバレを回避したい方は、この先に進まず、画面を閉じていただけると幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、

いやまじでおめぇよく頑張ったな!!!!!できるじゃん!!!!!!!!

今までパステルに散々ちょっかい出したり、ギアに対してあからさまに嫉妬したり、だいぶ精神年齢低いことしてきたトラップにしてはすごい進歩だと思う。パステルに「あなたを守る」って意味を持ったペンダントをあげて、無言で抱きしめたくだりはほんと、「えっ!?!?!?!?」ってなりましたよ。ほんとびっくり。いいわぁ!!!(突然のスグリ

 

さて、真面目に書く。トラップがパステルへ恋心を抱き始めたのはいつだったか、それはわからない。ただ、彼がそれを自覚したのは、私はやっぱり、ギアの出てきたところだと思う。ほんと、想像でしかないけれど。

 

FQシリーズはパステルの目線で書かれるから、パステルの気づかないことは書かれないわけで。だから、読者としても、まぁトラップはパステルのこと好きなんだと推測できるけど、「このトラップの行動もそういうこと???」って、はてなマークだらけになるわけです。だってパステル気づかないんだもん。ただの、トラップとパステルがくっつけばいいなって思う読者の曲解?って思った時もあった。でも最終巻、トラップから明らかな発言はなかったものの、すべての答えを与えられた感じがします。先生、ありがとうございました。全巻読み返して答え合わせしたくなってしまった。

 

パステルはルーミィを守り、ルーミィのママを見つけるということに使命感を持っていた。トラップはそれをわかっていたから、自分の気持ちをパステルに伝えるのかどうするのかは、ルーミィの件が落ち着いてから考える、と思っていたんじゃないかなと想像します。髪を長いままにしていたのは、きっとそういうこと。彼は今まで、結構いろんなことを考えてきたはず。

いま振り返ると、新FQ第11巻、ドーマに発つ前の晩シルバーリーブで雑魚寝していたシーンでの彼は、そういったことを考えていたように思えてくる。

つまりこれが、ゼンばあさんの言うところの「時が満ちなければ解決しない」の意味なのではないでしょうか。

 

2人の関係性は、結局最終巻に至るまで、目に見える進展は見られなかった。トラップ、誰かに相談できなかったんかい、って思うけど、まぁ、無理だろうな。自分の中にしまいこんでしまうタイプだろうから。それに、相談したところでどうにもならないことを、よくわかっていただろうから。

 

ルーミィが無事ママの元に帰り、パーティは解散することとなる。そしてパステルは、お祖母様と仲直りする決意をする。

みんなが離れ離れになる前、冒頭の件があったわけで。今まで度々トラップはパステルを守ってきたけれど、これからはそうはできないから、「あなたを守る」という意味の込められたペンダントを渡した。無事に、穏やかに過ごせるようにと。(あと変な男避けか)

このときトラップは、本当はパステルに、自分の気持ちを伝えたかったんじゃないかな。でも、パステルは新たな環境で生活する決意を固めているから、今じゃない、って思った。だから、言えなかった。口が達者なトラップが、無言で抱きしめるしかなかったんだから。それがもう、答えだよね。ずっと一緒にいたかったんだろうな。そして、パステルのこと、本当に愛してるんだろうな。

 

パステルはお祖母様の元に、トラップはクレイと共に故郷に戻って休養する。各々が各々の時間を過ごして気持ちの整理をする半年は、彼らにとって、必要な期間だったんじゃないでしょうか。

パーティ解散から半年後、今まで姿を見せず手紙も出してこなかったトラップが、髪を切って、パステルの元にやってくるというシーンで、FQシリーズは終わる。「時が満ちた」ってことなんだろうな、って解釈した。

 

パーティの仲間たちのことを、パステルは大切な「仲間」そして「家族」、それ以上にもそれ以下にも思っていなかったはず。パーティの仲間である以上、パステルからトラップに特別な感情が向くことって、やっぱり難しかったりしたんじゃないかな。だから、これからだぞ。頑張れよトラップ!